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JAGAT『文字組みの基準』から、可読性の話、など(その1)

2009/03/10に、「FeZn/Firework/inVox」にupしたエントリを、少し成形・追記して、こちらにもup。

【memo】JAGAT『文字組みの基準』から、可読性の話、など - FeZn/Firework/inVox

『便覧 文字組みの基準 デジタル時代の文字組版ガイド』/JAGAT(日本印刷技術協会)/代表編者:藤野薫/初版1999年
http://www.jagat.or.jp/BOOKS/kaisetsu/mojigumi-kai.htm
※amazonだと「文字組の基準」になってる。(「み」が抜けてる。)


必要に迫られて紐解き、ついでに自主勉強な部分も……読みながらメモ。

この本自体は1999年に書かれたようなので、最新の技術に関連する内容は期待しない方向で。
本を開くといきなり黄金比の話とか、ムツカシーことを言ってるので引いてしまう……かもしれないが、それならランダムアクセス的に利用すればよろし。「便覧」だし。
少々気になるのは、重版してるのに表記揺れとか諸々、目に付くところ。代表編者は居ても、元の原稿書いてる人はバラバラなのかな?
ちなみに現時点(2009/3/10)、まだ半分までしか読めてない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
pp.13-14
横組なら長体(コンデンス体)、
縦組なら平体
……を使うと、読字速度が高くなる。
→=可読性(Legibility)が上がる。

--(引用↓)--------------
すなわち、横組では適度の長体化、縦組では適度の平体化が可読性を高めることは事実である。
 日本の日刊紙の多くは、縦組各段の行長が32ミリ程度であるが、活字を平体にして12字詰めとしている。(中略)要するに、長年にわたる試行錯誤の結果、可読性と収容字数(単位面積の情報量)の双方が確保できる最適の形式へ到達したもののように見て取れる。

--(引用ここまで)--------------

この件については、p.28(文字変形などについてのくだり)の傍註でも扱われている。
--(引用↓)--------------
縦組みでは平体化(新聞)、横組みでは長体化によって可読性が高まることが確認されている。ただし、いずれも変形率は20%程度が限度で、過度の変形は字形の歪率が大きすぎて可読性を悪くする。

--(引用ここまで)--------------

「新聞活字がどうして扁平なのか」という件については、
・「面積の節約のため、戦時中にそうなった。」
・戦後の物資不足時代を抜けても、なぜか元に戻さなかった。
・「読みづらいだけで必然性は無いんだよ」説
・「いや、可読性を高めるんだよ」説
等々、いろいろあった気がするがソースが思い出せない。

そのうち少なくとも一冊は、

片塩二朗『活字に憑かれた男たち』
……だったかな?
§
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
p.17
字体・字形・字種・書体 etc.の用語解説と、JIS規格の解説文中での混乱などなど。

JIS1978……「この規格は、文字概念とその符号を定めることを本旨とし、その他字形設計のことは範囲としない」
JIS1983……そのまま引き継ぎ。
JIS1990……そのまま引き継ぎ。
JIS1997……「この一文は明らかに間違いである」(X0208・386頁)

※このJIS規格の解説文について、本書の解釈。(p.17傍註)
--(引用↓)--------------

この一文は、当時は写真植字に依存せざるを得なかったことから、印刷された字形までもが規格の規定ではないことを表現しようとしたものであろう。

--(引用ここまで)--------------

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

p.27
活字の「ウェイト」について。傍註より。
--(引用↓)--------------

活版活字では、字面の画線が太くなるほど重量が大きくなる。ウェイト(重さ)という用語は、サイズが同一でも、画線が太い活字は、秤り売りの際重量が大きくなることに由来している。

--(引用ここまで)--------------
この件についての、(欧文文献とかの)出典表示は無し。
このへんは某先生とかに訊いたら一撃で真偽わかるんだろーか。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4章のトビラに以下のような警句があった。

“ルール通りにできるようになるまでは、ルールを破るのは賢明ではない”(T.S.エリオット)

いやはや、まったく。自戒も込めて、思う。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
p.37 ぶら下げ組みについて。
--(引用↓)--------------
 句読点(本来は行頭禁則字)に限り、行末を超えた位置に来ることを許容する方式。活版、写植の手作業では、これにより禁則処理の必要回数を減らせたから、能率が向上するという効能があった。ただし、本来は縦組みについて行われてきたもので、横組みには用いるべきではないとするのが長らく定説となっていた。(*)
 その一方で、ぶらさげ組みを許容することにより、禁則処理の頻度が減らせることから、現在では横組みにも拡張され、普遍的に行われるに至っている。
(*)縦組みの行末とは異なり、横組み行末のぶらさげ組みでは、句読点のはみ出し(行末への突出)が顕著に目立つという視覚的な理由によるもの。

--(引用ここまで)--------------

……とあるのは、僕にとって初耳。(横組みについて)。

この本、『文字組みの基準』(横組み)自体は“ぶら下げ無し”で組んである模様。二段組みで段間が広くない場合には、確かに「出っ張ると、邪魔」というのは事実だろう。

欧文組版の場合だと、少なくともハイフンを“ぶら下げ”にする事例……というか規範が、あった筈。(メジャーじゃないかも。)
(……てゆうか、多分 kazuipress.com(嘉瑞工房) の記事で読んだ気がする。)
自分が触っている組版ソフトだと、横組みでもデフォルトで“句読点ぶら下げ”になる。
そんなに目立つかなぁ? 個人的には気にならない。(これも“慣れ”の問題かもしれない。)

また、ぶら下げ組みの由来については、別途メモ参照。(あとで書く、予定。多分 http://fezn.exblog.jp/ にて。)
by fezn | 2009-03-19 02:17 | DTP


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