世の中がテラ豚丼を追うときに、われわれはその文書の文字を見ている。

さてさてまったくおひさしぶりの鉄と亜鉛です。
この1年、outputの量がすさまじく減っておりまして「これではいかんなぁ」となむ思う次第。
もっとも http://fezn.vox.com/ のほうは「歩きながら更新」できることもあって、それなりの頻度を保っております。(そこで下書きした内容を、こちらに反映できずに居るのですが……)

2007年09月01日には地元の例のDTPの勉強会に初めて参加してみたり、そこで誘われて09月15日にはエキサイティングな会合(?)とか。そのあたりの話をwebにフィードバックせねばならんなぁと思いつつ、脊髄反射的に次の話題へ。



b0062477_138433.jpg

[PDFファイル] 吉野家:動画投稿に対する当社の対応について[2007.12.03]http://www.yoshinoya.com/news/pdf/071203.pdf


今日のお題は、このPDFファイル。

経緯はというと、
■はてなブックマーク - タグ テラ豚丼
http://b.hatena.ne.jp/t/%e3%83%86%e3%83%a9%e8%b1%9a%e4%b8%bc
を辿っていただければ…と思う次第。

まあ例によってFeZn的に要約すると、牛丼が(ほぼ)復活した牛丼のない牛丼屋チェーンにおいて、かつて自軍を低価格競争に誘い込んだ敵軍に敵愾心を持った若きメンバーが暴走し、敵軍の主力装備に対抗して自軍の弾薬を固め撃ちした! しかし超絶的豚丼構築とその使い方は適切とは世辞にも言い難い危険度(あるいは不衛生)に至っており、微笑充満的なる動画投稿サイトにて公開された映像に非難囂々。自由すなわちフリーダムを標榜する若きメンバーらの正体が時間雇労働者であったりする中で、牛丼帝王の指導者層は素早く判断して上述のPDFファイルをサイト上にて発表するに至ったという顛末。意味不明。


さて当該PDFファイルを見てみます。Microsoft Wordか何かで作成された文書なのでしょうか? PDF生成はドライバ型のものを使用している模様です。
ファイルのプロパティを見ると、PDF Producer は「SkyPdf Pro Driver Version2.51 Build Pro0071」となむ。すなわち…
b0062477_1383725.jpg


■SkyPDF Pro 2.5 -株式会社スカイコム SkyCom Corporation
http://www.skycom.jp/pro2.5.html


ですね。
セキュリティ設定は「文書アセンブリ、注釈、署名etc. 不許可」すなわち「印刷はOK」
フォントは「MS明朝」と「Century」そして謎の「00」というTrueTypeフォントが使われています。
b0062477_1391528.jpg


この「00」(フォントメニュー名はきちんと和名がついている…のかもしれません。)というフォント。何に使われているかとい言えばおそらくアレです。アレ。

b0062477_1294177.jpg

(※画像を切り貼りして、行間に罫を引きました。)

ヨシノヤと言えば、「つち吉」の字形を保持すべく頑張ってる会社であります。
おそらくこれは、電子文内にて「つち吉」の字形を実現するためのハウスフォント(という用語が正しいか否かはさておき)だと思われます。
この部分だけ、フォントを変えてあるわけですね。
すばらしい根性!
(でもワープロ文書まで「つち吉」を統一しても、電子メールまで統一は無理では? ……まさか全台にinstallして全員強制HTMLメール??)



ここで言う「つち吉」は、「吉」の字の上半分が「士」でなく「土」となっている字形のこと。いっぽう「さむらい吉」とは(一般に目にする印刷活字字形がそうであるように)「士(さむらい)」になっている字形のこと。(一般的な用語かどうかは知りませヌ)
半可通なFeZnが語れば、もともと「つち吉」と「さむらい吉」は異体字の関係というよりは「隷書では『つち吉』につくり、楷書や明朝体では『さむらい吉』がバランスが良いから、そのように書いているのに過ぎぬのじゃ!」というものらしいです。
↓などの関連エントリをご参照ください。
■FeZn/Bookmark : 字形問題関連。「辻・吉は(そんなに)問題じゃない」説を「鈴」の字形の揺らぎを通して説明してみる。
http://fezn.exblog.jp/6432505/


ヨシノヤ関連の印刷物を見てみると、太隷書の看板だけでなく、メニューや関連印刷物における明朝体・角ゴシック体・丸ゴシック体等々の「吉」の字が、ことごとく「つち吉」になっているわけです。


話が少しそれますが、そこヒラメクことは……いわゆる和文ゴシック体(角ゴも丸ゴ)も、楷書体や明朝体と異なり、筆書の古い古い歴史を直接に継承する印刷書体ではないのですから、べつに「つち吉」につくっても文字系の舌鋒鋭いヒトタチから叱られずに済むのではないかと想像してみる次第。もとより和文のゴシック体は、隷書の影響が多分に見られる……という話があったりしますし。(そして角ゴシック体において明朝体の字形を「可能な限り再現しようとする」ことは、書体の性格上そもそも限界が見えまくり、だという話とか。)
その舌鋒鋭いヒトタチからすればきっと(想像、としておく)明朝体において「つち吉」に作るのは滑稽なことである、と。

「いわゆる『異体字』とは異なる」から、なのでしょうかね。各フォント会社さんの説明書を読んでいると、二種類の対応が見られる気がします。「外字フォント内に、『つち吉』を用意する」VS「用意しない」。
(中小ベンダー含めたTrueTypeフォントを概観した記憶で語ってます。)

b0062477_1302034.jpg

……とまあ、世界に冠たる牛丼帝王なので、きっとそのあたりまで含めて考えた上で、「ワカってるけど、敢えて『つち吉』に作ることで、一目みただけで【吉野家】という存在感をアピールできる!」とか考えてるのかもしれません。
考えてないかもしれませんがそれはさておき。

……しかしながら。
このweblog “FeZn/Bookmark”見に来ているようなヒトタチは、画面上で上記PDFファイルを見ただけで「ひっかかる」と思うのです。
「『吉』の字が、変」と。
漢字の各部位の、形が妙なんですよね。

b0062477_1303956.jpg


……MS明朝に合ってないですよコレ。

※フォントがエンベッドされていないようなので、スクリーンショットのうちの「吉」以外は、手元のWindowsXP搭載の「MS明朝v2.3」が表示されているようですが、PDFプロパティによれば作成元フォントは「MS明朝(バージョン不明)」(「エンコーディング:UniJIS-UCS2-HW-H」)なので、PDFファイル制作者と、ほぼ同等の環境で再現されている筈です。
(MS明朝5.0も別のところで表示させてみましたが、文字のエレメントの細部にも目立った差異はありませんでした。)


……はて。これは何の書体をベースにして作ったのでせう?
これをMS明朝だと主張するのは無理がある気がします。
【※追記1】バランス云々はさておき……図中の、丸で囲ったエレメント各部の形状が異なります。
いくつか手持ちのPCに格納された明朝体を見比べてみましたが、イマイチ判然とせず。MS明朝がやはり似ていると言えば似ていますが……
あるいはそれに加えて、フォントエディタからの書き出し時に「間引かれて」しまっている、のでしょうか? (「土」部の右端終筆部ふたつ見比べると、形状が明らかに違う。)
IllustratorEPSをWMF (Windows Meta File) 保存したときの形に似ているような気がします。
※技術的なことはそれ以上はワカりませんが。
※SkyComで扱っているSkyPDF Server PROのオプションソフト「TrueType外字作成ツール」なのかもしれませんが、調べる手段が今のところ思いつきません。

……天下のヨシノヤさんなんですから、特製フォントの品質についても、もっと気ぃを使ったほうが良いのではないかと想像するのであります。
われわれ(←誰だ?)のような人種はこうして、世の中がテラ豚丼を見ているときに、その文書の文字を見ているワケですが……そうでない人の眼からみても、この「つち吉」の浮き具合は百名に十数名は気になるでしょうきっと。

「MS明朝5.0」+「異体字切り替え対応ソフト」+「フォントエンベッドしたPDF」に限定する……という手も考えましたが、手元の環境で調べた限り「MS明朝5.0」には「つち吉」の字形は収録されていない模様。アウト。









公開モウド化の前に、ちょっと発見したことがあるので、別エントリに。



考えてみると、ニュースリリースなPDFを肴にエントリ立てるというのは
■FeZn/Bookmark : FAX経由、高圧縮PDFらしきもの。
http://fezn.exblog.jp/4169915/

と同じですねぇ。



まあこんなエントリ書いてたら冒頭のアレとかコレとか。
それにFeZnの別名義をご存じの方にはお知らせしたりしましたが別系統の集団のイヴェントがあるので準備とか準備とか準備とかで本業以外にも忙しいのでした。

……というか本当は、こっちの問題のほうがタイヘンなのですが。
■M.C.P.C.: モリサワOpenTypeのAJ1-5フォントのバージョン更新で異体字が勝手に差し変わるという資料をモリサワが発表
http://blog.dtpwiki.jp/dtp/2007/12/opentypeaj15_5ef2.html


■実験る~む 今ならまだ止められるのかね
http://dslabo.blog4.fc2.com/blog-entry-1077.html



まあ、鉄と亜鉛の職場は、最近PowerMacG5を導入したばかりなのですけれど。
(しかし外注先が既に使いまくってるはずなので、問題が出てくると思われます。……と書いたところで社内向けに簡易説明を書きかけて、改めて「ぎょっ」としている現在。)




(2007.12.09.追記)
PDFをテキストエディタで無理矢理開いて使用フォントを割り出そうとしたりしていましたが、それよりスマートな形での検証が出ていました。
※なにぶん僕の試していた方法だと、文字コード表を見ながら1文字ずつ追っていかねばならない上に、単にフォント名がワカるだけでしたから……。

■吉野家の「つち吉」 - mashabowの日記
http://d.hatena.ne.jp/mashabow/20071207/1197034362

にて。

そのまま FontForge に突っ込めば良いとは。
これは気づきませんでした&知りませんでした。
ありがとうございます。

……しかし1文字の中でエレメントの統一が取れていないですよね……。うぅむ。



(2007.12.09.追記)
文中、「太隷書」って書いてますが、あれって「太隷書」ではないような気が。



(2007.12.09.追記)
本文編集ミスを訂正。
文中、【※追記1】と目印をつけた部分、
初出時は下記のとおり。

……はて。これは何の書体をベースにして作ったのでせう?
これをMS明朝だと主張するのは無理がある気がします。
(「土」部の右端終筆部ふたつ見比べると、形状が明らかに違う。)
いくつか手持ちのPCに格納された明朝体を見比べてみましたが、イマイチ判然とせず。MS明朝がやはり似ていると言えば似ていますが……
あるいはそれに加えて、フォントエディタからの書き出し時に「間引かれて」しまっている、のでしょうか?
IllustratorEPSをWMF (Windows Meta File) 保存したときの形に似ているような気がします。
※技術的なことはそれ以上はワカりませんが。
※SkyComで扱っているSkyPDF Server PROのオプションソフト「TrueType外字作成ツール」なのかもしれませんが、調べる手段が今のところ思いつきません。


訂正後は下記のとおり。


……はて。これは何の書体をベースにして作ったのでせう?
これをMS明朝だと主張するのは無理がある気がします。
【※追記1】バランス云々はさておき……図中の、丸で囲ったエレメント各部の形状が異なります。
いくつか手持ちのPCに格納された明朝体を見比べてみましたが、イマイチ判然とせず。MS明朝がやはり似ていると言えば似ていますが……
あるいはそれに加えて、フォントエディタからの書き出し時に「間引かれて」しまっている、のでしょうか? (「土」部の右端終筆部ふたつ見比べると、形状が明らかに違う。)
IllustratorEPSをWMF (Windows Meta File) 保存したときの形に似ているような気がします。
※技術的なことはそれ以上はワカりませんが。
※SkyComで扱っているSkyPDF Server PROのオプションソフト「TrueType外字作成ツール」なのかもしれませんが、調べる手段が今のところ思いつきません。



すなわち、
(「土」部の右端終筆部ふたつ見比べると、形状が明らかに違う。)

を後ろに持って行って、
バランス云々はさておき……図中の、丸で囲ったエレメント各部の形状が異なります。

を挿入。

……「はてなブックマーク」のおかげか、ホットなキィワード「テラ豚丼」が含まれていたゆえか、平常の十倍近いユニークビジター数を記録したのですが、たいていこういう場合は殆どの方に訂正前の文章をしか読んでいただけないのですよね。一期一会。
だから僕は妄想するのですよ。読み手としても書き手としても、追記・訂正のみ提供するような仕組みがあれば、と。

アツいエントリ発見後webフィード購読体制を取れば良いじゃないか、とは思いつつも、しかし「あまり興味のない多数の話題の中の例外として興味あるモノがある」フィードなどについては登録しないでしょうし、ましてweb閲覧しまくる中で一瞬みかけたものなどについてはそのようなこともやっていられませんしね。

……まあこの件に関しては、たいした訂正でもないのですが。



(2008.02.04追記)
本稿中では「つち吉/さむらい吉」問題は「字形」だと書いていますが、
tonan氏こと大熊先生の書かれた文章とか、先日お会いしてこの問題についてお話を伺ったところを反映すると、
これは「字体」の問題
のようです。
うーんまだ頭が整理できていないのですが、いずれ新訂版エントリを書きたいと思います。
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by fezn | 2007-12-06 01:47 | Typeface


メディアの海の片隅で、ぷかぷかと漂っているクラゲ。文字とか組版とか、勉強中。


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