武道連想、「活字はイコール文字ではない」そして文字と身体性の連動についての連想。

※元々は2005年8月25日(古いなー)に書いたエントリを12月に公開。

 前々から書こうと思っていて(いるうちに、当該のマーク自体が変更になってしまったりして)書けずにいて、ふとこの記事を見てその着想に増幅を加えて以下の如く。
 今日は文字と身体性についてとか。そこから脱線してつらつらと。
 結局のところ個人的な感想とイメージの話のような気もしますが。(統計とってませんし。)

生活日報 - Yoshi『恋バナ』(隷書でラブが語れるか!)
http://d.hatena.ne.jp/mashco/20050823/1124759529

 URL出しておいて本文とは全然関係ないんですけれどね。隷書が出てましたので。
 隷書で本文と言えば、全世界限定2部で作った本がありましてそれの本文に隷書体使ったなぁとなむ思ったり。ラブを騙ってる(←誤字)本ぢゃないからいいか。

 さて、もとよりFeZnは武道とかやっている変集者(←誤字)なわけですが、その関連。
 日本には(海外にも)いろいろな武道がありますが、それぞれの流派は技術体系の特徴や思想を反映したロゴマークを持っていたりします。Web検索してもいろいろ出てきます。
 ま、意匠的なロゴが無いにしても、力強い筆文字で流派名を記したものがあり、皆同じそれを道着の胸とか(部位は流派によって異なる)に入れているワケです。
 で、そういうので明朝体とか宋朝体って見たことないんですよね。和文ゴシックもあまり記憶にない次第。(試合のゼッケンはゴチだったり。)


THE KARATE WORLD
財団法人 日本空手道連盟
http://www.karatedo.co.jp/jkf/jkfcont.htm
サイトタイトルはゴチ。

全日本新空手道連盟公認HP
http://www.netpro.ne.jp/~s-renmei/
サイトタイトルはミン。

 空手は一武道一流派からはほど遠い状況にあるので、道着に入っている紋とか書の例をこういう大組織のサイトから探るのは不可能でしょう。
 一方、一般社会における位置とか総合的に言えば最大の「世界武道」であり、事実上一武道一流派であるところの柔道(講道館柔道)はというと、道着に紋とか流派名を大書したりしないので例になりませぬ。
 まあ帯に入っている個人名とかは、楷書が多いのでしょうか? 統計資料とかないのでわかりません。
 ただし現代は、武道具屋さんで皆いれると思うので、カタログを見て、「書体の選択肢があるか無いか(ビジネスのハンコや封筒だとミン/ゴ/丸ゴetc選択肢がある、わけで)」「どのように入れる人が多いかの統計があるか」ということは調べられるかもしれませんが。
 (たぶん統計としては無いでせう)

 で、空手の道場をGoogleImage検索して無作為抽出。

愛敬館空手道場
http://aikeikan.net/top.htm

白蓮会館
http://www.byakuren.com/page/honbu.htm

新国際空手道連盟 芦原会館 岩国支部
http://www.sky.icn-tv.ne.jp/~trhk1115/ashihara-kaikan-iwakuni-keikofuukei.html

 ↑どれも胸の文字は手書き系(というか、いわゆる筆文字)になっています。墨一色というわけでもなさそうですが。



 で、柔道。
財団法人全日本柔道連盟:::All Japan Judo Federation:::
http://www.judo.or.jp/

講道館
http://www.kodokan.org/index_j.html

 サイトは楷書系になっていたり。
 そういうコンセンサスがあるのでしょうか?
 (簡易色校のほうじゃありません。)←業界ネタ。

 講道館柔道と言えば「精力善用」「自他共栄」。http://www.kodokan.org/j_basic/kokoro_j.html にあるこの掛け軸ですね。柔道の道場に行くと、こういうのがかかっているわけですが、まあ当然筆文字。



 で、こちらは合気道。

合気道・合気会
http://www.aikikai.or.jp/
合気道・養神館
http://www.yoshinkan.net/

 筆文字。行書とか?
 ちなみに気の字はこちらの字形でないといけない、と仰る合気道の先生もいらっしゃいます。それは新字体だと「メ」→「〆」=「締め」=「しめてしまう」一方、旧字体に内包する「米」の部分は、「発する」の意を秘めているから、だそうです。そういう道場では、基本的には旧字を使っている模様です。

 で、合気道(合気会)も道着に流派名を大書したりしないわけでして、裾とかにロゴマークがひっそり入っていたりします。あと帯とかに。
 合気道系のところは何カ所か存じ上げていますが、筆文字に拘っているところとか多いような気がします。

WebArchive 1999の日本少林寺拳法公式サイト
http://web.archive.org/web/19990128160000/http://www.shorinjikempo.or.jp/

 なんとなく、日本少林寺拳法(少林拳とは別物)っていうと隷書系(と言っていいのかな?)のイメージがあるのですよ。この過去アーカイブ見ていただければわかるとおり。
 アーカイブ? ……そう、今年変わったんですよね。ロゴ。

現在の日本少林寺拳法公式サイト
http://www.shorinjikempo.or.jp/

 手書き書体の「少林寺拳法」から欧文ローマン体の「SHORINJI KEMPO」になったようです(詳しい書体名は不勉強につき不詳)。スモールキャピタルですか。なるほど小文字で組むと弱そうな感じしますし。(個人的見解?)
 しかし、活字由来の活字書体(ちと分かりづらいです表現)になってしまうと、行書や隷書と比して、「文字の身体性」が薄くなると思うわけです。
(「活字由来の活字書体」と書いたのは、「手書き書体由来の金属活字」を含まないため)
 手書きは【手】の運動、活字は「タイプ」っていうぐらいですから、量産的・工業的・機械的なものなんですよね。(無理矢理名分類かもしれませんけれど、まあ。)

 ただし、文字の身体性は、(いわゆる)活字書体においても【無い/無くなる】わけではないそうです。
 『欧文書体 その背景と使い方』の最初の部分で、「欧文活字書体は幾何学的な直線・曲線で構成されているように見える。だが、レタリングの本にあるように定規とコンパスで考えるのではなく、右手に持ったペンを【手で動かして】考えないとラテン・アルファベットは理解できない」といったようなことが書かれていますし。
 (これについて小さなネタを準備中。)
 しかしそれでも、印刷にオプティマイズ(最適化)される過程で整理された字画は、毛筆による隷・行・楷etcほどに濃密な身体性を有しているわけではないと思うわけです。

 で、武道はさまざまな思想があるにせよ、なんといっても【身体】のものです。(僕ぁ結構理屈っぽい流派の、その中でも相当に理屈っぽい門弟ですが、それでも。)
 道着に新ゴとかナールとかで流派名が入っていたら萎えますが、そういったものは殆ど見かけません。技術書がMS Pゴシックだったりするのはご愛敬。(←そういう例を見たことがあるわけではないです。でも多分あると思うので。)
 それは、制定した方たちが「文字の書体と身体性」なんてものをアタマで考えたわけではありますまいが、日々の行動と日常の文化から、自明のものとして導き出されるのではないでしょうか。
 平たく言うと「ん? 考えるまでも無く筆文字だろ」ってことで。

 さて、人類学とか社会学とかは、科学でありますので、いろいろな文化事象をパターン分けして分類します。でも生活当事者にとってはそのようなコト分け(コトワケはコトワリ=理に通じ、科学的発想の根源でもある)なんて意味はないんです。自分たち自身、「これは○○○○型なんだな」とか考えながら生活してたりしませんから。(普通は。)
 (こんどBlockBlogのほうで、アンソロポロジスト(人類学者)の視点による汎文化的な親族論とか語る(騙る)予定あります)
 人文科学は、既に存在するなにかを、あとから整理するにすぎないわけですが、その整理した結果をもって学問のレイヤーでは議論しますし、当事者の中でも、所謂インテリ層はそれを使ったりするわけです。(現在は知の偏在化etcにより、「層」という言い方は不適切かもしれない)
 が、大部分の、その文化の当事者にとっては、「非明示的/あるいは無意識的に」おこなわれるものなのです。
 (これを、常に忘れてはいけないわけでして)←おおむね先生の受け売りだったりする。
 たしかビアスも、国語は辞書によって定義されるのではなくその逆である、とかそんなようなことを言っていますし。

 ※ただし、武道の道着に入れているのが手書き書体であるというのは、単に先行した流派が筆文字で、皆それに倣っているだけという可能性もなきにしもあらずですが、「たぶん」違うと思います。


 さて、日本少林寺拳法のマークがラテン・アルファベットになったわけで、その意図が分かりかねる鉄と亜鉛です。
 というよりも根源的には、「ショウリンジといえばレイショでしょう」と思っていたのが、隷書系のロゴでなくなったところに個人的な違和感を感じているのですが、ラテン・アルファベットで隷書体、にするともっと変ですから、漢字でなくなった時点で必然なのかもしれませんが。

 世界武道として、公式のものも世界中の誰にでも(おおむね)読めるものにしたという意味ではバリアフリーというかユニバーサルなロゴになったわけで素晴らしいところです。
 今回の変更は、「卍」マークがナチスのハーケンクロイツを連想させるということもあって、国際的な普及の妨げになるから、ということがまずあるようです。また、僕はこの門内の人間ではないので詳しいことは分かりませんが、いろいろな事情があるようです。内部の政治とか。
 骨肉相食む(←こういう語彙はATOKで変換できないようになってる模様)事情とか。そうすると身体性の希薄なもののほうが良いのでしょうか(穿ちすぎ)。
 それでもそんなことをいろいろ考えていると、この表記と字種と書体の選択は、「不偏不党」ってぇような意味合いを、非明示的/あるいは無意識的に含んでいるような気がしないでもない今日このごろです。

 ※ただし「無意識」ってぇ言葉は無敵過ぎて本当は禁句なんです。あらゆる文化表象がこれで片づいてしまいますし、反証不可能ですからね。


(ちなみに日本少林寺拳法は流石に門弟の方の数も多いらしく、この流派名を含むエントリが各種エンジンの検索結果の上位のほうに入っている期間は、アクセスが増えます。たぶん。これは武道のほうのWeblogでの感想ですが、今回もおそらくそうなるのではないかと思います。)


 で、隷書とローマンの話で持ってきてところでうちの流派(超マイナー。流派名称書いただけで僕の身元がワカるくらい)。
 流派のロゴは、流派名と図案の組み合わせなんですが、名称は行書なんですね。
 7年くらい前に自分たちようのパンフみたいなものを作ったとき、道着の胸マークをコピー機にかけてトレースして表紙に入れたりしました。そのとき、行書と楷書でヘンやツクリの形状が異なったりする、っていう知識を持たない奴が、勝手に楷書ふうのエレメントに直しちゃったりしたわけです。
 …………それは僕ですが(汗)

 ちなみに今は、ちゃんとしたベクトルデータを受け取って、それを使っています。
 でも文字の部分は元々宗家が書かれたものではないほう(武道具屋さんの手になる)を使っているので、なんとかそちらを復元したい今日このごろ。


 ところで、○○美大の人に出した「クイズ」の正解をば。
 「鯨海酔侯」です。あのページに使ってあるの。あと、新ゴ。
 本当は亡き宗家の字から起こしたいんですが、まだそこまで手が回らなくて。でも「鯨海酔侯」格好いいからデカデカと使っちまいました。
 ちなみにフルパッケージ購入する度胸はなくて、必要な文字だけ切り売りサービスで購入した次第。

 向こうではFeZnなんて名乗っていないですし、どちらからもリンクを張りませんので、この正解ページに気づく人はきっと絶無でせう。(←意味ないじゃん)



 ところでupする前にリンク先とか読み返して気づいたんですが、日本少林寺拳法のアーカイブで見ると、本部に大書してあるのミンチョウタイのような気がして、本稿の意義これにて終了。
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by fezn | 2005-12-23 18:45 | Typeface


メディアの海の片隅で、ぷかぷかと漂っているクラゲ。文字とか組版とか、勉強中。


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