ハンダの語源の旅をする。

 「はんだ」。半田付けのハンダ。
 表記はいろいろありますが、語源については『世界大百科事典』を調べても分からなかったという数年前の記憶から、さて現今どうなのだろうかとWebを検索する次第です。
 これ、仕事のほうで、ちらと調べる羽目になったってぇこともあります。

はんだ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%82%93%E3%81%A0

 恒例のWikipedia。しかし語源については言及なし。ほかをあたってみませう。

 キィワードを組み合わせたところ、Google検索で一番上に来ました。
大胆!独断!「はんだ」の語源は中国語からか? 2004/06/25(金) 13:33:01
http://forum.searchina.ne.jp/2004/0625/column_0625_001.shtml

 これから述べる、「はんだ語源説」は極めて独断的なものである。また軽い気持ちで書いており、大上段に振りかぶったものではない。従って、この説が私の予想に反し全く的外れであっても、目くじらを立てず愚か者の戯言と軽く笑い飛ばしていただきたい。

 とはじめてらっしゃいます。
 調べたところ、地名の由来には錫の産地として知られるマレーシアのバンダ島(盤陀島)に由来するという説や日本の福島県北部にあった半田銀山に由来するという説がある。
 地名や人名以外の由来にはハンド(手)が転じたとするような説もあるがどの資料も説明の後は常に「ただし確証はない」で結ばれており、要するに誰もはっきりとは分からないようである。

 で、混合比とかの話がありまして、
 中国語で「金早(金編+早、以下同)」という字がある。ハンと読む。「はんだ付け」「はんだ付けする」という意味である。 中国語で「的」という字がある。ダと読みこれが名詞や形容詞につけて使われると所属や性質を表す。例えば「我的」は「自分の(もの)」、「日本的」は「日本の(もの)」、「新的」は「新しい(もの)」、「美麗的小姐」は「美しい女性」といった具合だ、だから「金早的(ハンダ)」となれば「はんだ付けした(もの)」となる。

 中国語の話。
で、遣隋使の時代にハンダの技術を目撃したのではないかという仮説。このころ既に大陸にはこの技があった模様。日本でも奈良の大仏などに使われているようで。
 当時日本から中国を訪れた日本人はそれまで見たことのない多くの見知らぬものに出会いきっと驚いたに違いない。はんだ付けしたものもその中の一つであっただろう。そして驚きながら聞いたのだ。「これはなんだ。どうして金属どうしがこのようにくっついているのだ」。聞かれた中国人はきっとこう答えたに違いない「這是金早的(ジェーシーハンダ・これははんだ付けしたものである)」。その時初めて日本人は錫と鉛の合金を溶かして金属用接着剤として使うことやその物を「金早的(ハンダ)」と覚え、物や技術と共にハンダという言葉を持ち帰ったのである。


 この仮説の中で、二つほど、若干違和感を感じるところがありまして、それが丁度こちらのWeblogで1年も前に書かれているわけです。

うんちくを騙る(語るにあらず): ハンダの語源
http://mi-si.blogzine.jp/blog/2004/06/post_15.html

1.随唐音は、日本の漢字の音読の中心になっているのでそのまま日本語で音読した方が北京語で発音するより当時の原音に近い。(中略)
2.次が非常に重要なポイントであるが、ここで使われている的は、英語の-ticを翻訳する為に明治初期に導入された和製漢語の一つで明治以前にはあまり一般的な用法では無い。それが中国に逆輸入されている。そもそもは、宋・元代の俗語らしい。
つまり遣隋使の時代に○○的と言う用語の使い方は存在しなかったと考えられる。




 僕の中国語は、入門編の途中ぐらい(しかも忘却)なのでアレですが、古い言葉を現代の読みで解釈したらNG、ってぇのを理解しました。なるほど勉強になります。
 そういえば以前のNHK大河ドラマ「北条時宗」で、チンギス・ハーンの喋る言葉が現代の中国語(普通話=北京語?)に聞こえたのですが気のせいですかね。
 このあたりもわかるようになれたらいいなぁ。と思う次第です。

 でも1.のところで
つまり金早的は、「きんそうてき」の方が当時の日本人が聞こえる音に近いわけでどう聞いてもハンダには成らない。

 としているのはしかし「金早」は既出のとおり一文字で表記する術がない(と見えた)為の分かち書き(?)であって「きんそう」ではないと思うのでした。
 ATOKやMS-IMEの手書き入力からは、入らない模様ですね。ユニコードに入っているんでしょうか。
 大漢和辞典とかならOKかと思いますが、いまBTRONノートが手元にないので分かりません。

 こんな字ですね。
b0062477_223529100.jpg

 (※2005/5/9,22:30追記/見あたらないのでペタペタ貼って作ったのですが、これではなく「銲」だそうです。http://d.hatena.ne.jp/huixing/20050510/handaありがとうございます)

で、ほかをあたってみると、

JWES -What's welding-
http://www.jwes.or.jp/jp/wh_weld/wadai.html
 溶接の話ですね。
 はんだはいつ頃から使われだしたのだろうか。徳川綱吉の時代に書かれた貝原益軒の万宝鄙事記(1705年)では、銅容器の漏れを塞ぐに表面を松ヤニでこすり、錫鉛棒を傷口を塞ぐ程度の大きさに切り、傷口にのせて裏面から炭火で加熱し、錫鉛片を溶かすとあるので、この時にははんだの言葉はない。 これが幕末の慶応二年(1866)になると、江戸守田座で初演された河竹黙阿弥の歌舞伎狂言「船打込橋間白波」の脚本に、鋳掛の松と呼ばれる溶接工の「鉛や盤陀の売物なら要らないよ・・」と云う台詞がある。字は違うがこれがはんだの原型かと思われる言葉が出てくる。 このはんだの語源を二三の大辞典でみると、福島県半田鉱山かマレー諸島のBANDA島だとしている。しかし、前者は明治末の山崩れによる閉山まで1000年ほど続いた官営銀山で、鉛はともかく錫産出の記録はない。それに盤陀が半田となったのが、明治近くからだとすると、単に名前が似ていただけとも思える。 後者のBANDA島が錫鉱山ではと探したがその島はなく BANDA海のみである。世界的に鉛の産出地は多いが錫鉱山はごく限られ、インドネシア付近では三島のみとあり、いずれもJAVA海内である。BANDA 海とは相当離れているので、こちらの説も信憑性は薄すそうである。 ろう付技術が中国経由で導入されているので、軟質ろう材を意味する??(ハンラ)の発音が少し変形したのではと思っているが、これも古くは鎔鑞(ロンラ)だったとされているので、この話も少々怪しい。 あれこれ考えると、俗説で云う錫と鉛の混合比がほぼ「半々だ」を、なまって半田になったとするが、一番本当らしい語源のように思える。

 となむ。
 こちらの調査ではハンダの語が使われるようになるのは江戸時代、と推測しています。(そうすると奈良時代説は無理、になるわけですが)
 それでも結論が出たわけではなく、ハンダの世界は謎に満ちています。新しく革命的な資料が出てこない限り、これって未来永劫解決しないんじゃないかなぁ、と思ったりします。そしてそれは難しいと思いますし。

 しかし「金早」氏の説の通り「銲」がハンと読んで、ハンダを意味するのであり、
 それが近現代の発音(古い発音は関係なくなる)とすると、日本の文献で江戸時代(=近世)から「ハンダ」の語が出現するのだとすると……

 ……関係ありますかね、どうなんでしょう。

 そういえば江戸期の発音は、「はひふへほ」は「ふぁふぃふふぇふぉ」に近く、奈良時代とかだと「ぱぴぷぺぽ」に聞こえるぐらいで、

 春過ぎて……の短歌(持統天皇)も
ぱるーつんぎーてー

 だったと思われる、と金田一先生が書いていらっしゃるように記憶しています。

 日葡辞書にも「ニホン」のことを「NIFON」と書いてあったり。
 江戸時代「母にはふたたびまみえ、父にはひとたびもまみえず。なにか」。その解は「唇」、という謎々があったそうです。(確かこれも氏の本)
 「はは」と発音するときは唇が二度くっつき、「ちち」と発音するときにはくっつかない。つまり「FAFA」という(もしくは「PAPA」に近い)発音だったわけで。
 島嶼部などで、母のことを「ぱぱ」と発音する方言があったりしますが、これは現代日本の平均的語彙における「パパ」とは無関係なわけでして。

 「日本」が「にほん」か「にっぽん」か、という問題が常に巻き起こり、閣議で議論したりしていますし、日本銀行券には「NIPPON GINKO」と書いてあるのに銀行名は「にほんぎんこう」だったり、色々。
 とりあえずWeb上でざっと検索して記憶補強。NIPPONという発音は鎌倉時代にはあり、NIHON(NIFON)というのは江戸時代から、とする見解もあるようです。
 前述の金田一先生の本では、時代が下るにつれ、P音がF音を経てH音になってきた、ということなので、NIPPONのほうが古くてNIHONは新しい、のでしょうか。

 さて脱線から戻りますと、江戸時代の「半田」というのは「ファンダ」だったのでしょうね。
 英語のHandに由来する、という説もあるそうですが、これはFであった筈という視点からは否定されるわけです。
 当時の「金早」「銲」の字がH音だったとすると、直接には繋がらないのかなぁ、と思いもします。(いやしかし単語の輸入時に変化したり)

 ん。江戸期の文献の記述は「盤陀」ですかね。BANDA?
 そうすると、BANDAが清音化してHANDAになったのか、
 FANDAとして出来た言葉なのか……
 それによって異なってくるように思います。

 むー。ムツカシヒ。


 貝原益軒の時代に「はんだ」という記述が残っていないからといって、それ以前にその語が無かったとは言えない(きちんと文献読めば「言える」のかもしれませんが)とも思えます。

 とりあえずH音は歴史をたどるとF音、さらに古くはP音だったということで、
 HANDAの本来の発音はPANDA、つまりあのモノトーンの動物が由来であると断言します!

 …………うそです。



 まあジャイアントとレッサーの二種類いますが、ジャイアントは昔は知られていなかったそうですし。レッサーパンダはFireFoxなのでこれを期に、ここを検索で偶然見つけられた方も、ブラウザをFireFox(結構快適です)にされたらどうかなぁとか無関係なことを考えたりします。(もう意味不明)

http://www.mozilla-japan.org/products/firefox/



はんだの語源についてクリップしたURLを「はてなブックマーク」に置いておきます。
こういう使い方もアリかなぁと思います。そうすると、将来このエントリに検索から飛んできた方が、このあと僕が追いかけたものがみつかる、かもしれないわけですから。
  1. keyword「ハンダ」
  2. keyword「はんだ」


表記揺れがありますので、二つ張っておきます。現時点、and検索or検索が出来ないようですし。


(2005/5/9,22:30追記/insとdelで若干追記。&「ぱるーつんぎーてー」のところは、金田一先生の単行本ではなく、ある本に掲載されていたものの筈なので、探してちゃんとした引用文を持ってきます。その他検索結果も補完予定……)


(2005/5/19,01:30追記/本来BlockBlog用の話題なんですが、画像を扱うためにこちらに持ってきました。……画像は不要と分かったので、加筆版は向こう行きですね。それと、よく考えたら大陸の人が時代劇で現代語を喋っていてもおかしくないですよね……日本の人も時代劇で現代語(ちと時代テイスト)で喋ってるわけですから)



(2005.07.05追記)
「はてなブックマーク」にタグ機能が追加されているので、[語源-ハンダ]というタグをつけておきました。表記揺れは手動で対処……
はてなブックマーク > FeZn/Sinfonia > 語源-ハンダ の検索結果
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by fezn | 2005-05-08 23:56


メディアの海の片隅で、ぷかぷかと漂っているクラゲ。文字とか組版とか、勉強中。


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